第五回予想問題 世界史

世 界 史

第 一 問

大帝国ローマもその属州の拡大が止まると、労働力として当然存在すると見なされていた奴隷の流入は減退した。ローマはラティフンディア維持の為に没落した農民を小作人とした。その後の中世ヨーロッパではキリスト教的友愛の精神により、同じキリスト教徒の奴隷化は禁止されていた。地主は、農民に農業労働を強制する代償に、彼らを防衛した。中世では、恩貸地制と従士制が融合した封建制度と共に、荘園制は相互的に維持していた。それ故に、中世から近世にかけての政治的統合形態の変化は荘園制にも変革をもたらした。
イギリス、フランス、ドイツ、そしてロシアといったヨーロッパ諸国の中世の農業は、いずれも荘園制という形をとりながら、その解体過程には大きな差が存在する。
以上のことを踏まえて、11世紀から20世紀頭までのこれらの国々を比較し、荘園制の変貌、解体の背景を踏まえ、その過程を説明し、荘園制解体の影響を答えよ。解答は、解答欄(イ)に20行以内で記述しなさい。その際、下の8つの語句を必ず一度は用いて、その語句に下線を付しなさい。

中世農業革命 ハルデンベルク エカチェリーナ2世 啓蒙 アレクサンドル二世 農奴解放金 囲い込み ペスト(黒死病

第 二 問

宗教は歴史を大きく動かす力である。歴史上で宗教対立が引き起こした戦争は数知れず、一方で宗教の力で起こった革命もある。また、宗教は巡礼や弾圧からの亡命などで歴史上多くの人の移動を引き起こしてきたという側面もある。宗教にまつわる歴史について、以下の3つの設問に答えなさい。解答は、解答欄(ロ)を用い、設問ごとに行を改め、冒頭に(1)~(3)の番号を付して答えなさい。

(1)インドで多数派の宗教はヒンドゥー教であるが、多宗教の国家である。イスラームについては、イギリスからの独立時にイスラーム教徒の多く住む地域が東西パキスタンとして分離したものの、現在のインドでもイスラーム教徒は人口の二割ほどを占める。また、北部ではシク教などの人口も多い。このことに関する以下の(a)(b)の問いに、冒頭に(a)(b)を付して答えなさい。
(a)インドへのイスラーム勢力の度重なる侵入について、主な民族や王朝名を挙げながら、2行以内で説明しなさい。
(b)紀元前のインドでヴァルナ制を否定する宗教が誕生したことについて、どの層からの支持を集めたのかに触れながら、2行以内で説明しなさい。

(2)中世ヨーロッパにおいて、宗教対立は戦争の大きな原動力であったが、近世ヨーロッパではそのような傾向は薄れていった。特にドイツ三十年戦争は、最後の宗教戦争と呼ばれる一方で、主権国家間戦争としての特徴も確認できる。ドイツ三十年戦争宗教戦争としての側面と、主権国家間戦争としての側面について、合わせて4行以内で説明しなさい。

(3)戦前の朝鮮半島は「東洋のエルサレム」とも呼ばれ、キリスト教が大いに栄えていた。現在も韓国の人口の一割程度を占めると言われるカトリックは、16世紀にイエズス会士などによって布教され、弾圧されつつも信仰を守ったと言われる。一方で朝鮮の開国後にはプロテスタントの宣教があり、現在もプロテスタントが韓国の人口の二割程度いるが、一方で伝統的な価値観も強く残存している。このことに関する以下の(a)(b)の問いに、冒頭に(a)(b)を付して答えなさい。
(a)新羅による統一後からキリスト教伝来以前にかけての朝鮮半島の宗教の様相について、代表的な史跡や書物の名を挙げながら、2行以内で説明しなさい。
(b)16世紀中盤以降、 日本・朝鮮・清朝ではキリスト教に対する激しい弾圧が行われた。この共通の要因として考えられるところを、キリスト教の教義を踏まえて2行以内で説明しなさい。

第 三 問

グローバル化が進展すると言われる現代において、グローバルとは厳然と存在する主権国家の国境を超えた動きのことを指す。しかしながら現在のような国家体制が確立したのは近代以降のことで、それ以前から国を超えた人や物の移動、および国際関係は存在していた。このことに関する以下の設問(1)-(10)に答えなさい。解答は、解答欄(ハ)を用い、設問ごとに行を改め、冒頭に(1)~(10)の番号を付して答えなさい。

(1)古代文明の一つで、古くから記録の残っているエジプトでは、歴史上様々な民族が侵入し、また関わりを持っている。古代エジプトにおける、他民族との交流について、次の(a)(b)の問いに答えなさい。
(a)条約の歴史は古く、国家間の関係が築かれた古代からその存在が確認されている。中でも公式な記録が残っており、現在世界最古の条約として考えられているものに、紀元前1274年頃にシリアで起きた戦争の講和条約が挙げられる。エジプト第19王朝とこの条約を締結した国家の名を答えなさい。
(b)新王国滅亡後のエジプトは末期王朝と呼ばれ、弱体化して存在していた。このうち第25王朝については、ナイル川上流の王国に征服されており、黒人の王がファラオとなっていた。末期王朝時代のエジプトに侵入した、ナイル川上流の王国の名前を答えなさい。
(2) アレクサンダーの東方遠征によって、ヘレニズム期のギリシャの彫刻文化は遠く北インドにまで伝わり、ガンダーラ美術を生んだ。「サモトラケのニケ」などに代表されるこれらヘレニズム期の彫刻文化に先立って、急速に彫刻技術が発展したのは紀元前5世紀ごろとされる。この頃のアテネで活躍し、『アテナ女神像』の製作などで知られる彫刻家の名前を答えなさい。
(3)ユーラシア大陸の東西を結ぶ3本の交易路は、古代から機能していた。たとえばオアシスの道については、紀元前2世紀後半の張騫の派遣後、中国から中央アジアへと至る道として本格的に開拓されている。また、張騫から汗血馬という名馬の存在を耳にした前漢武帝は、中央アジアのある国へ李広利を派遣している。漢の西域諸国への影響力を強めるきっかけともなったこの遠征の、相手国を答えなさい。
(4)神聖ローマ帝国は、その名の通りローマ教会の庇護者としての性質を持ち、皇帝は少なくとも形式上は諸王の上に君臨する存在となっていた。その実質的な権威が下がって、皇帝位がほぼハプスブルク家世襲状態となってからも、金印勅書による選挙は続いていた。1519年に行われた皇帝選挙では、フランス王が初めて立候補し、スペイン王カルロス1世と選定侯の買収合戦を繰り広げたのち、敗れている。このフランス王の名前は何か、答えなさい。
(5)金を滅ぼしたモンゴル帝国は、紙幣を発行し始めた。フビライ即位後の1260年には元の紙幣発行は本格的なものとなり、この時代に国家的規模で広く紙幣が発行され、流通したのは世界史上でも記録的なものである。元で発行された、この紙幣の名前を答えなさい。
(6)インド洋交易は、古代ローマの時代から盛んであり、当初はギリシャ商人、8世紀からはムスリム商人、16世紀からはポルトガル商人や中国商人がこの貿易を担った。インド洋地域の交易について、次の(a)(b)の問いに答えなさい。
(a)北インドイスラーム化が着々と進み、戦闘の中心が従来の象と歩兵から騎兵へと変化しつつある頃、南インドのある王朝は軍事力のために大量の馬をアラブやペルシアから輸入していた。14-17世紀に繁栄したこの王国の名前を答えなさい。
(b)東アフリカの沿岸部は、古来インド系商人やムスリム商人が貿易のために訪れ、言語的・文化的にも他地域と様相を異にしている。現在のソマリアの首都であるモガディシュなどには、この他にも永楽帝時代の中国から貿易を求めて大艦隊が訪れている。この大艦隊を率いた宦官の名を答えなさい。
(7)いわゆる新大陸の発見後、スペイン人などによって、新大陸原産のサツマイモやジャガイモ、トウモロコシなどがヨーロッパやアジアに伝えられたことは、世界の食文化や農業、人口などに大きな変化をもたらした。一方でヨーロッパ人によって新大陸に持ち込まれた栽培植物も少なくない。キューバ島イスパニョーラ島で盛んに栽培されたプランテーション作物は何か、答えなさい。
(8)19世紀後半には、国境を超えた結びつきが強まり、様々な国際機関が設立された。たとえば、郵便の規格化による国際的連携を強化するための機関として、1874年には万国郵便連合が設立された。また、1863年には国際赤十字が設立されている。国際赤十字の設立を提唱した、スイス人実業家の名前は何か、答えなさい。
(9)帝国主義に対抗する国際的な共産主義運動を推進するため、レーニンはいわゆるコミンテルンをモスクワで結成したが、スターリンの一国社会主義の路線が固まると、コミンテルンソ連による各国共産党の指導組織へと変質していた。しかし1943年、スターリンは35年の第7回大会以降未開催だったコミンテルンを解散している。当時の戦争の構図を踏まえて、コミンテルン解散の目的として考えられるところを1行以内で答えなさい。
(10)アルバニアパルチザンを率いたエンヴェル・ホッジャはスターリン主義の信奉者であった。ホッジャ独裁体制下のアルバニアは、フルシチョフスターリン批判を機にソ連と断交、毛沢東主義を掲げる中国に接近するが、文化大革命終了後は断交し、鎖国状態に入ることとなった。しかしそれ以前の1971年にはアルバニアが主導で歴史的な決議が国連総会で成されている。このいわゆるアルバニア決議の内容について、1行以内で答えなさい。

コメント

久しぶりの更新です。第一問はY君作問。取り急ぎ。

第二回予想問題 地理

第 二 問

世界と日本の土木や交通に関する以下のA~Bの問いに答えなさい。解答は、解答用紙の(ロ)欄を用い、設問・小問ごとに改行し、設問番号・小問番号をつけて記入しなさい。

設問A

図2-1および図2-2は地理院地図の一部で、図中にはそれぞれ人造湖が含まれている。

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図2-1

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図2-2

(1) 図2-1中の九頭竜湖駅までの鉄道は、現在の北濃駅までの鉄道(長良川鉄道)と一体で計画されたが、図中央の区間は未完成のままとなっている。九頭竜湖から北濃駅までの鉄道計画のルートとして考えられるものを、解答用紙の図中に書き込みなさい。また、なぜそのルートが相応しいのかを、地形に着目して1行以内で答えなさい。

(2) 図2-2中の若葉台で戦後に起きたと思われる地形改変について、1行以内で述べなさい。

(3) 図2-1中には複数のダムが描かれているが、これらのダムの建設目的と、その目的に対してなぜ九頭竜川が適しているのかの背景について、九頭竜川の流路を踏まえて、あわせて4行以内で述べなさい。

(4) 図2-2中の城山湖津久井湖ではどちらの水面が高いか、答えなさい。

(5) 図2-2中の城山湖津久井湖の間では、標高の低い湖から標高の高い湖に水を汲み上げて、水を低い方へ流して発電する、揚水水力発電が行われている。なぜここで揚水水力発電が行われているのか、次の語句をすべて用いて、2行以内で述べなさい。語句は何度用いても良いが、使った箇所には下線を引くこと。

夜間 ベースロード電源

(6) 図2-1中にも、揚水水力発電のためのダムが設けられている。その名称を答えなさい。

 

設問B

以下のA~Cはユーラシア・北アメリカ・オーストラリアの各大陸における、大陸横断鉄道のうち一経路における、主な都市の位置を模式的に示したものである。

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図2-3

【図2-3の凡例】

○:首都または国内最大都市

▲:人口100-300万人の都市

■:人口50-100万人の都市

(注)人口300万人以上でかつ首都でも最大都市でもないものは存在せず、また人口50万人未満の都市は表していない。

(注)Bの西端は海に面していない都市である

 

(1) A~Cの西端はそれぞれどこの国に属するか。D—日本の形で答えなさい。

(2) 北米大陸における最初の大陸横断鉄道の開通は1869年とされているが、その当時は東端はネブラスカ州までの開通だった。なぜ1869年をもって「大陸横断鉄道」の開通と言えるのか、その理由を貨物輸送の面から2行以内で述べなさい。

(3) Aを運営する鉄道会社は、1885年以前の西部の路線が未開通の頃、東部から訪れた旅客向けに船舶による輸送も行っていた。この理由として考えられるものを、1行以内で述べなさい。

(4) Bの鉄道を活用して、1928年以降に新たな形式で工業振興がなされたことについて、具体的な地名や鉱産資源の名前を挙げながら、2行以内で述べなさい。

(5) ロシアの鉄道は、すべてモスクワ時間で案内されているため、乗車する際には注意が必要である。いま、ウラジオストク駅を午前11時50分に発車する列車に乗りたい。このとき、ウラジオストクでの実際の時間はおおよそ何時ごろだろうか。午前または午後を付して答えなさい。

なお、モスクワ時間は東経45°を基準として考えて良く、ウラジオストク時間は実際の経度から概算で求めよ。また、ロシアではサマータイムは現在存在しない。

(6) オーストラリア大陸では、2004年、人類史上初となる大陸縦断鉄道が開通した。アデレードを出発し、大陸横断鉄道と並走したのち、分岐して大陸中央部を北上し、ダーウィンに到着する。この大陸縦断鉄道を南から北まで乗り通したときの、沿線の気候帯の変化について、2行以内で簡単に述べなさい。

 

補遺

地理は作問コストが大きい……大変です……でもこういうことをやっていると地図とかデータとかが随分頭に入りますね。

設問A

高い湖——城山湖

揚水水力発電のダム——鷲ダム

日本海側なので流量が多いので、ダムとしては有利ですし、洪水防止としても重要です。九頭竜ダムのすぐ下に鷲ダムというのがあって、それは揚水水力発電をしているそうです。なるほど。

城山発電所は、つまり夜の余剰電力を位置エネルギーに変換して、昼間に力学的エネルギーに変換して電力を得るということで、巨大な電池と言えるのだそうです。小学生のときに揚水発電を見学に行って、何て無駄なことをしているんだと唖然とした記憶がありましたが、そういうことだったんですね。

設問B

乗ってみるならシベリア鉄道がいいですね。沿線にも都市がたくさんありますし。ただ最近は随分国際情勢も不安定で、少し心配です。

オーストラリアは清々しいくらいなにもないのですが、この「途中にアデレードが無い」というのがヒントになって、東端をメルボルンではなくシドニーと判断できると良いなあというささやかな願いを込めてあります。人口最大都市はシドニーでした。勿論キャンベラではありません。

北米大陸はカナダなのに気づきましたでしょうか。都市が少ないのと、西端の人口も少ないのに気づいていただけるとありがたいです。西端はヴァンクーヴァーです。合衆国のほうだと、西端はサンフランシスコやロサンゼルス、あるいはサンディエゴなどになるので、もう少し人口が多いです。

ちなみに、シアトルとヴァンクーヴァーは人口規模では区別がつきません。では、ここで東側を見てみます。まず西半分にカナダ第三の都市・カルグリーが存在するのがヒントです。アイダホやモンタナには大きな都市はありません。そしてさらに○が2つあるのに気づきましたか。これは結論からいうとトロントとニューヨークなのですが、ワシントンDCとニューヨークのペアだと思ってしまった方もいるでしょうか。仮にワシントンDCからニューヨークまでの間を通っているとしたら、その間に確実にフィラデルフィアボルティモアなどの大都市を通っているはずです。ゆえに選択肢として削除できます。トロントをオタワと間違えても仕方ないでしょうし、この問題では影響ありません。同じく、東端のニューヨークをワシントンDCだと誤解しても問題ありませんが、ワシントンDCは近くまでチェサピーク湾が迫っており、川幅もそこそこ広いものの、海に面しているとまでは言えないので否定できます。

そうそう、大陸縦断鉄道ってレアなんですね。特にユーラシアには新期造山帯が東西に走っているから、これまで無理だったのでしょうね……。

 

第一回予想問題 地理

第 一 問

世界の地形と、それに関連した人々の生活について、以下の設問A~Bに答えなさい。解答は、解答用紙の(イ)欄を用い、設問・小問ごとに改行し、設問番号・小問番号をつけて記入しなさい。

設問A

以下はアフリカ諸国の人口についての階級区分図である。これを見て次の(1)から(5)の問いに答えなさい。

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(1) 上図から、人口は河川の経路とも関わりがあることが見てとれる。上図で着色されている国のうち、(a)アフリカ最長の河川の通る国(b)アフリカで二番目に長い河川の通る国を全て挙げなさい。

(2) 図のAの地域の諸国は、国土面積の割に人口が少ないことが見てとれる。その理由を、下記の語句をすべて用いつつ、自然環境の面から2行以内で説明しなさい。語句は何度用いても良いが、使用した箇所には下線を引くこと。

中緯度(亜熱帯)高圧帯 樹林

(3) B国とC国は隣接しており、ともに人口が多い国であるが、この2カ国の代表的作物は異なる。それぞれの国での代表的作物をあげつつ、その背景にある両国の自然条件の差異について2行以内で説明しなさい。

(4) D国は人口が多いが、同時に多民族国家でもある。この国では民族的対立と資源を巡る対立によって、南部のカタンガ州が分離独立を宣言し、内戦に発展した。このカタンガ州で採掘される地下資源として代表的なものを、一つ挙げなさい。(※Dは図中Bと同じ色の国です。追って修正します)

(5)E国には国名と同名の、世界的にも大規模で深い湖が存在し、隣国との国境となっている。この湖の成因について、2行以内で答えなさい。

 

設問B

以下のAからIの文章は、それぞれ世界各地の港について述べたものである。これを読んで、次の問いに答えなさい。


A(34.69N, 135.19E)
山々から湾に至る急峻な地形により天然の良港として知られる。1970年代にはコンテナ取扱量世界1位となっていた。

B(37.45N, 126.70E)
首都の外港として発展した。2002年のサッカーワールドカップ開催に伴って建設された国際空港が有名である。

C(33.90N, 35.50E)
世界で最も古い都市の一つとも言われ、この国の首都である。2020年には爆発事故が発生した。

D(59.93N, 30.36E)
かつて首都が置かれていた都市で、世界最北の百万都市である。不凍港ではなく、冬期は凍結する。

E(51.89N, 4.41E)
愛称の通り、地域一帯の中心的な港である。国際河川の河口部に位置する。

F(6.46N, 3.39E)
かつて首都が置かれていた都市で、現在も国内最大都市の港市である。首都は内戦後に内陸へ移転した。

G(41.35N, 2.17E)
地中海に面した港で、独立運動が盛んな州の州都であり、国内でも第二の都市である。有名な芸術家の建築物群は世界遺産に登録されている。

H(34.58S, 58.37W)
大河川の河口部にあたる首都の都市で、コンテナ船が多く寄港する。北方の隣国の首都へはフェリーも出ている。

I(47.60N, 122.34W)
大陸氷河によって削られた天然の良港で、沖合を暖流が流れ、貿易では日本との関係も深い。この州の最大都市である。

 

(1) 大河川の河口部にあたるEとHの地形について、成因にも触れながら、合わせて3行以内で述べなさい。

(2) Aの港がある地域には、秋から冬にかけて冷たく強い風が吹き下ろす。この局地風の名前を、特に背後にある山脈の名に因んで何というか、答えなさい。

(3) 以下に示したのは、AからIの所在する国のうち5カ国について、人口に占めるキリスト教徒の割合とその宗派別の内訳を示したものである。(ア)、(イ)、(ウ)の国名をそれぞれ(カ)—日本のように答えなさい。

*「正教」はロシア正教ウクライナ正教、ギリシャ正教を含む

**大韓民国の括弧内の内訳については、2005年の韓国統計庁発表による

(二宮書店『データブックオブ・ザ・ワールド2018』による)

 

(4) A港、I港のある両都市は姉妹都市提携を行っているが、これは一つには貿易上の結びつきが大きいことがきっかけとなっている。I港から日本へ輸出されるものとしては、航空機や小麦が大半を占めるが、木材や紙・パルプなどの製品も多い。I港のある州で林業が発達している理由を、自然環境の面から2行以内で述べなさい。

(5) G港がある国では、G港を含む地域以外でも異なる民族による独立運動が盛んであるが、そのことについて、民族の特徴に触れながら2行以内で述べなさい。

 

補遺

設問A

コンゴ民主共和国国勢調査1984年の一回のみしか取られていないそうで、人口の詳細は推計に過ぎず、よくわからないそうです。ただし、他の国の統計を信じるとすれば、コンゴ民主共和国と同じ一億人弱の人口を持つ国は存在しないので、アフリカ全体の国別の人口順位が四位であることは確実だそうです。

他の国の統計を信じるとすれば、と書いたのは、たとえばナイジェリアの人口は盛大に水増しされている、という噂を耳にしたことがあるからです。実際のところはよくわかりませんが……。民族対立の関係で各民族が人口を水増し……とか? いちおう、公式にはアフリカ最大の人口とされていますし、そういうことで行きましょう。まあでも日本だって統計書き換えのおかげでGDPも実質賃金も信用ならないようですからね……

カタンガ州はカッパーベルト地帯なので銅。そしてニッケルの世界的産地だそうです。

設問B

A神戸 B仁川 Cベイルート Dペテルブルグ Fロッテルダム Gラゴス Hブエノスアイレス Iシアトル

ブエノスアイレスモンテビデオのフェリーですって。乗ってみたいですね。フェリーといえばタンガニーカ湖には100年前から現役の船がフェリーで就航しているそうです。夢はありますが、沈没すると文字通り底なしなので生きては帰ってこられなそうで、少し怖いですね。

(ア)USA(イ)レバノン(ウ)ロシア

ロシアよりレバノンのほうがキリスト教徒多いらしいです。まじか。ソ連時代の弾圧の影響は強そうです。レバノンは一応イスラームのほうがぎりぎり過半ですが、シーア派スンナ派もいるので、対立を避けるべく宗派政治なんだとか。たとえばキリスト教徒とムスリムはそれぞれ半数の議席になることが確定しているんです。

 

間違い等あればお教えください。

 

 

 

 

はてなブログ・縦書きのサンプル(『幼年時代』書評)

 私が紹介した縦書きを実際に適用するとどうなるか、サンプルとして、先日書いた書評と同じ文章を貼っておこうと思います。

  *

 谷中のほうに"鮫の歯"という古書店があるが、営業時間は「昼頃から夕暮れまで」という。実に素晴らしい精神性である。江戸以前の人間と同じく、なんと絶対的な時刻でなく、太陽の運動によって「昼」の長さが決まるのだ。内装や雰囲気、本の種類が好みで何度か足を運んだのだが、どうもその気まぐれな営業時間と私の気の向くタイミングが合わない。

 実のところ、私がその店に足を踏み入れたのは、初めて通りかかった一度きりである。

 確かその日は冷たい長雨が降り続いており、凍える道中にふと見つけた明かりが"鮫の歯"だった。店内の懐かしく穏やかな、それでいて影も湛えているような雰囲気の中には、未だカヴァーの掛かっていない時代の岩波文庫が、小綺麗なフィルムに包装されて並んでいた。中でも特に、『或る少女の死まで』という、ドキッとする題名が私の心を惹いた。

 私のおぼろげな文学史の知識で、おそらくこれが室生犀星の自伝的小説であることは覚えていたが、室生犀星の育ちには全く知識がなかった。それどころか、凡そどの世代の人かもあやふやだった。しかしながら、古本というのは一期一会のものである。仮に他所でこの本に出会ったとしても、その本にはきっと小綺麗なフィルムは無いし、おそらく冬の雨の暗い日に感じた輝きもきっと目減りして見えるだろう。——そう逡巡して、購入したのが、二、三年前のことであった。

  *

 あれから何冊の本を読んだか記憶にないが、今夏積ん読を選っていたときに、彼日の感動と共に『或る少女の死まで』と再会した。ささやかな期待とともに頁を開くと、この本を貫く雪国独特の重苦しい空気は、不思議にもあの冬の雨の日と通ずるものがあった。

 他二篇とあった通り、本書は『幼年時代』『性に目覚める頃』『或る少女の死まで』の三作から成るが、順に幼少期、思春期、そして上京後の青年期を著した作品である。特に前二篇は時間的近さもあって内容にも密接な繋がりがあるが、テーマが異なる。本稿では、まず『幼年時代』について書く。

  *

 犀星の複雑な生い立ちが著されている。文章として特段に華があるわけではなく、どちらかというと随筆と伝記の中間のようなもので、淡々と事物が描写されるのだが、その中でちょっとした心の動きがしばしば述べられる。思うに、この構成自体が実に幼年時代らしいと思わされるのは、子どもはなかなか自分の感情を具に語らず、また当の本人にすらよく解っていないからだろうか。

 全体を通して家族の話であるが、その複雑さゆえ飽きることなく入り込んでゆける。生みの母も姉も、結局疎遠になってしまってそれきりのように書かれているのが、名状しがたい感情を掻き立てる。当時まだ幼い筆者には、一度離れてしまった人間とはもう二度と再会しがたいのである。それゆえに、生みの母との別れを悲しみ、過去を懐かしんでいた時期においても、一方で常に「父」や姉との別れを懼れているのが伝わってくる。現に姉は嫁ぎ、父はその先の死を見据えていた。幼少期に苦しい別れを繰り返した筆者の気持ちは想像を絶するが、しかしながら一度別れを経験した人間が、「守り」に入るような人間関係を構築していくことは、少しわかる。

 このような状況下だからこそ筆者は仏教に傾倒した、といえば明快に思えるかもしれない。しかし、作品中で筆者と仏教との出会いは至って自然に、しかもかなり無意識的に行われている。私は(少なくとも信仰心の篤い)仏教徒ではないので、この辺りの思想は想像しがたいのだが、宗教との出会い・信仰心の萌芽とは概ねこのようなものなのだろう、と思った。「父」との静かで素晴らしい関係性も、きっと仏様が導いて下さったのではなかろうか、とすら思わせる力がある。尤も、以後の二篇に彼の仏教的思想はなかなか垣間見えないのであるが——。

 私は一度読んで、三作の中でこの『幼年時代』が一番気に入った。素朴で不器用な少年が、複雑でつらい人間関係の中でも生きていく様子が、読んでいるとどこか懐かしいもののように感じられる。それに、起承転結が無いのが良い。特別な出来事が起こるわけではない生活を、偶々この紙面に収まるからというだけの理由で切り取ったかのようである。ドラマの主人公ではない、自分と同じような一人の人間の人生だからこそ、その表現にははっとさせられるものがあるのだ。

kanchoiki.hatenablog.com

縦書きができたブログ:g.o.a.tのサービス終了

www.goat.at

前に使っていたブログサービスからサービス終了のお知らせが届きました。ちょっとショックです。

というのも、こんな感じ↓で、縦書きが公式に使える、貴重なブログサービスだったのです。

official-jp.goat.me

簡単にポチッと縦書きができ、Wordのような感覚でさくさく入力できたので、なかなか秀逸なサービスではあったのですが……

なんと言ってもおしゃれさ優先でユーザビリティが微妙な点があったのかもしれません。(私は、縦書きの一段の長さが妙に短いのがあまり気に入らなくて変えてしまいました)

縦書きでどうやったらブログができるのか、については今後も考えていきたいですね。

レスポンシブ非対応(スマホでうまく見られない)もので良ければ、こんなやり方もあります↓

kanchoiki.hatenablog.com

 

「意識的または無意識的に」~"Aまたはnot A"の表現~

意識的または無意識的に

「Aまたはnot A」とはつまり"全部"ということなのですが、こういう言い回しが必要になることがままあります。

私がたまに使うのは、「意識的または無意識的に」です。

  • (A)彼は、高校までで学ぶ程度の漢字は、既に小学生の時点で、意識的または無意識的にすべて身につけてしまっていたのだ

という例文などが考えられます。これを別の言い回しにしようとするとなかなか難しいのです。

  • (B)彼は、高校までで学ぶ程度の漢字は、既に小学生の時点ですべて身につけてしまっていたのだ

とすると、凡そ勉強熱心だから学習して身につけた、という印象になるのがわかるでしょうか。(A)での文意は、"一部は自然と身につき、一部は意識的に身に着けた"ということなので、文意が変わってしまったことになります。

似た言い回しとして、「Aであれnot Aであれ」とか「Aであるにせよないにせよ」などという言い方もありますね。

  • (C)彼は、高校までで学ぶ程度の漢字は、既に小学生の時点で、意識的であるにせよないにせよ、すべて身につけてしまっていたのだ

ん~……。なんか違います。これでは語り手が知らないというだけですね。

「Aまたはnot A」とは、一見すると変な、あるいは無駄な言い回しですが、意外にも置き換えのきかない表現に思います。

一部または全部

ほかにも、「一部または全部」というタイプの表現もありますね。

  • (D)費用については、国が事業の一部または全部を補助する

これは「意識的または無意識的に」とは異なって、全体集合を示していません。

先程の例は、元々カテゴリが{意識的/無意識的}と分かれており、言及しなければどちらかであると勝手に解釈されてしまうだろう部分に対して、その両方であることが強調する表現でした。

今、「一部または全部」という表現は、そもそもカテゴリが{なし/一部/全部}と分かれている中、一部と全部の両方であ(りう)ることを示したかったのです。

  • (E)費用については、国が事業の全てを補助しないということはない

(E)の表現は"ない"を否定しているので(D)と同じ部分を指しているのですが、ニュアンスが異なってしまっています。国はかなり消極的で、論理的にはありうるものの、"全部"が補助される可能性についてはほぼ無いと思われそうです。

こういう部分を見るに、言語は論理に基づくが、論理すなわち言語ではないのだ——と再認識させられます。

  • (F)費用については、国が事業の少なくとも一部を補助する

(F)のように、「少なくとも一部」などという言い方もありそうですね。ただ、余計なニュアンスを生みそうなところが気がかりです。(E)同様、マイナスイメージが濃厚です。難しいですね。

まどろっこしい表現にはなりますが、"Aまたはnot A"の形を使うと、ニュアンスの色をつけずに、より正確に意味を伝えることができそうです。

 

メモ:全体集合と「~のほかに」

「ほかに」と「が/も」

先日、少し疑問に思って、次のような構文を考えました。

「Pには、p1のほかに、p2がある」

「Pには、p1のほかに、p2もある」

「Pには、p1,p2のほかに、p3がある」

「Pには、p1,p2のほかに、p3もある」

これらは本来、p1,p2,p3がPという集合に属することしか意味していないので、Pの中にp1-p3以外のものが含まれていても何ら問題はないはずです。しかし、Pの全てがp1-p3であることが要求される場合もあるような気がします。

たとえば、「このクレヨンには、赤、黄のほかに緑がある」と言われたら、「じゃあ青はないのか……」という受け取り方になるのが順当なはずです。もっと極端な例では、「虹には、赤・橙・黄・緑・青のほかに藍がある」というのは限りなく偽の文に近いのではないでしょうか。明らかに紫を忘れているか、あるいは隠しているからです。

条件を考える

うーん、この構文は難しいですね。

では、一般に「AはBのほかにCがある」という文章は、どのような条件下で全要素の列挙になり、またどのような条件下で代表例の例示になるのでしょうか。考えてみましょう。

A,B,Cのそれぞれについて考えうる条件としては、例えば次のようなものがあります。

  • Pの要素が有限か無限か*1
  • Bで挙げられる例が一つか、複数個か
  • (学問的・法的になど)定義されていて絶対的なものか、話者の主観によるものか

今後機会があったら、この問題についてはよく調査してみたいと思います。

参考:アンケート

参考までに、以下に以前とった簡単なアンケートを貼っておきます。

 

*1:無限であれば、「全要素の列挙」はありえないので、「代表例の列挙」になるか、非文かという問題になります