メモ:全体集合と「~のほかに」
「ほかに」と「が/も」
先日、少し疑問に思って、次のような構文を考えました。
「Pには、p1のほかに、p2がある」
「Pには、p1のほかに、p2もある」
「Pには、p1,p2のほかに、p3がある」
「Pには、p1,p2のほかに、p3もある」
これらは本来、p1,p2,p3がPという集合に属することしか意味していないので、Pの中にp1-p3以外のものが含まれていても何ら問題はないはずです。しかし、Pの全てがp1-p3であることが要求される場合もあるような気がします。
たとえば、「このクレヨンには、赤、黄のほかに緑がある」と言われたら、「じゃあ青はないのか……」という受け取り方になるのが順当なはずです。もっと極端な例では、「虹には、赤・橙・黄・緑・青のほかに藍がある」というのは限りなく偽の文に近いのではないでしょうか。明らかに紫を忘れているか、あるいは隠しているからです。
条件を考える
うーん、この構文は難しいですね。
では、一般に「AはBのほかにCがある」という文章は、どのような条件下で全要素の列挙になり、またどのような条件下で代表例の例示になるのでしょうか。考えてみましょう。
A,B,Cのそれぞれについて考えうる条件としては、例えば次のようなものがあります。
- Pの要素が有限か無限か*1
- Bで挙げられる例が一つか、複数個か
- (学問的・法的になど)定義されていて絶対的なものか、話者の主観によるものか
今後機会があったら、この問題についてはよく調査してみたいと思います。
参考:アンケート
参考までに、以下に以前とった簡単なアンケートを貼っておきます。
【アンケート】
— 驟雨 Ŝuu (@mukimuki_mattyo) 2021年11月28日
(A)「東京都には、杉並区のほかに、世田谷区がある」
(B)「東京都には、杉並区のほかに、世田谷区もある」
参考:「東京都には、23区・多摩のほかに、島嶼部{が/も}ある」
※当然、杉並・世田谷のほかにも区はあります
【アンケート②】
— 驟雨 Ŝuu (@mukimuki_mattyo) 2021年11月28日
(C)「素数には、2,3のほかに、5や7がある」
(D)「素数には、2,3のほかに、5や7もある」
*1:無限であれば、「全要素の列挙」はありえないので、「代表例の列挙」になるか、非文かという問題になります