第四回予想問題 世界史
Y君と共同作問です。
世 界 史
第一問
以下の資料はトルストイ(1828-1910)が新聞に投稿した記事である。以下の文を読み、問いに答えよ。
戦争はまたも起こってしまった。誰にも無用で無益な困難が再来し、偽り、欺きが横行し、そして人類の愚かさ、残忍さを露呈した。
東西を隔てた人々を見るといい。一方は一切の殺生を禁ずる仏教徒であり、一方は世界中の人々は兄弟であり、愛を大切にするキリスト教徒である。その数十万人が、今や残酷な方法によって互いに傷つけ合い、殺し合おうと勢いづき、陸に海に野獣のように戦い合う。ああ、何ということか。これは夢か、そまことれとも真なのか。これは本当であってはならないことだ。ありえないことである。人は、それが夢であることを信じて、すぐに醒めることを願っている。
しかし、そうではない。それは夢ではない。それは事実なのだ!
著者トルストイ
-ロンドンタイムスの非戦論から引用。
問い
このキリスト教国は、彼らの起源である9世紀の公国と比較すると、その社会、政治、宗教的側面が大きく変化したと言える。その変化の過程を論ぜよ。但し、他の国家や民族に受けた影響を踏まえること。(400字以内)
第二問
訪台中のチェコのミロシュ・ビストルチル上院議長は9月1日、台湾の立法院(議会)で演説を行った。
彼は『困難な状況で民主主義を守る者を助けるのは民主主義国家の義務だ、われわれの経験を共有し相互的な協力を深めるために演説の最後に私の決意を込めた言葉を送りたい。「私は台湾市民である」』と述べた。
この最後のセリフは故ジョン・F・ケネディ元米大統領が1963年に西ベルリンで行った、彼の最高傑作とも言われる演説をなぞらえたものである。
私は、このベルリンに御高名な市長に招待された客人として訪れることができてとても誇りに思っています。皆さんの街の市長は西ベルリンの戦意 (Fighting Spirit) の象徴として世界中にしらしめた偉大な人です。また、私は、みなさんの著名な大臣とお会いできて大変光栄です。大臣はドイツの民主主義、自由主義、発展に永年かかわってきた方です。そして私は、この街で親しきアメリカの仲間達やあらゆる人々に、いつなんどき、危機的な時にも、ここで会うことができてとても誇りに存じます。
遠く2000年前、人々は「我こそはローマ人である(ラテン語)」と豪語したものでした。現在の自由な世界においては「私こそはベルリン市民である(ドイツ語)」と言えることこそ、もっともすばらしいのです。
問い
ドイツを取り巻く国際的な政治体制と経済を踏まえて、ドイツ国際関係を、第一次世界大戦後からケネディの演説に至るまでの期間で論ぜよ。
第三問
清朝においてそれぞれ61年、60年の治世を実現した[④]、[⑥]は名君と並び称されます。しかしながら、[④]の長い治世ののちの放漫財政を引き締めたほか、統治を安定化するための様々な文化政策を含む内政や外政を行って、[⑥]の治世へと結びつけた[⑤]の、わずか15年の治世も無視することはできません。
[⑤]は、たとえば制度としての奴隷階級を廃して課税したり、北京語を官話として普及させる取り組みを行ったりしたほか、立太子による皇太子の堕落や後継者争いを避け、円滑な皇位継承を実現するための「密勅立太子法」を考案しました。これは、皇位継承者の名前を書いた勅書を封印して隠した後、崩御後に一定人数が立ち会った上で勅書を開くという方法で、この結果、清朝では安定した皇位継承が行われ、愚蒙な皇帝の誕生を避ける効果もあったと言われています。
史上稀に見る勤勉な皇帝で、朝から晩まで政務を行い、大量の上奏文を片っ端から目を透し、朱筆を入れて送り返した[⑤]帝は、治世わずか15年で崩御しました。一説には過労死とも指摘されています。
問い [④][⑤][⑥]の皇帝の名をそれぞれ明かせ。また、 [⑤]の皇帝が取った諸政策について、[④][⑥]の二皇帝の政策と関連付けながら、その歴史的意義を論ぜよ。(400字以内)
補遺
第一問
近年一橋大学では出題されていないロシアからの作問です。ロシアは、ピョートル大帝が偉大な変革者であるというのは言うまでもないでしょう。しかしロシア帝国というものは彼のカリスマだけでなし得たとは言い難い。なぜなら、その下地たる専制君主性やギリシア正教、キリル文字は彼の治世に唐突に現れたものではないからです。高校世界史では、ロシアというものはそもそも今のような内面を持っていると言わんばかりに、領土拡大の歴史が語られているばかりです。変化は何があるのか、キエフ公国と日露戦争の時のロシアは比較となるとなるほど難しい。どの点で揃えて比較できるのかを自ら考えなくてはならない過去問は、伊独日の敗戦過程を書くものや、バルト海貿易と地中海貿易を比するものがあります。昨年のレンブラントとゲーテもそうでした。こういった問題を、読み手に比較を伝わるように書くのは、予備校でさえ苦慮しているのだと解答速報からも感じられます。(Y)