動詞語尾の接続を二分して考える【動詞接続形試案-2】
前回は推量の「う」を語幹接続という扱いにし、旧来の活用表をすっきりさせた。
さてその記事中で、次のような動詞語尾の接続一覧を示した(所謂「活用表」である)。
子音語幹動詞(例:「読む」)
語幹:yom-
yom-a-nai / yom-i-masu / yom-u(-koto) / yom-eba / yom-e
母音語幹動詞(例:「食べる」)
語幹:tabe-
tabe-nai / tabe-masu / tabe-r-u / tabe-r-eba / tabe-r-o
不規則動詞「する」
語幹:s- / su-
s-i-nai / s-i-masu / s-i-ro
su-r-u(-koto) / su-r-eba
不規則動詞「来る」
語幹:k- / ku- / ko-
k-i-masu
ku-r-u / ku-r-eba
ko-nai / ko-i
ここで、一つのことに気づく。規則動詞(←正格動詞)について、命令形はさておき、所謂未然形(-naiの接続する形)・連用形(-masuの接続する形)の二つと、終止連体形(-kotoの接続する形)・仮定形(-ebaの接続する形)の二つとで、接続を二つに大別できるとわかる。
未然形・連用形を甲、終止連体形・仮定形を乙とおくと、
母音語幹動詞は、甲は語幹にそのまま、乙は語幹に-r-を挟んで接続する。
一方、子音語幹動詞は、甲が-a-や-i-を挟んで、乙が語幹にそのまま接続する。
つまり、甲乙で分類してやれば、なんと煩雑だった六種類の動詞の活用形を、原則二種類(+命令形)にまで絞り込むことができるということだ。
甲を母音接続形、乙を子音接続形と仮に呼ぶこととして、以下に整理しよう。
母音接続形
形
子音語幹動詞は母音を一音補う。-a-または-i-。(例:yom-a- / yom-i-)
母音語幹動詞は語幹に同じ。(例:tabe-)
用法
①否定形・受身形・使役形への接続
否定"-nai"・受身"-re-"・使役"-se-"などが接続する。子音語幹には-a-を補う。(例:yom-a-nai / tabe-nai)
②連用中止法
(子音語幹には-i-を補って)動詞の並列などに用いる。文を一旦切って、続ける方法。(例:yom-i, / tabe,)
③「助詞」・「助動詞」への接続
(子音語幹には原則-i-を補って)多くの「助詞」・「助動詞」に接続する。*1 (例:yom-i-mas-u / tabe-te)
子音接続形
形
子音語幹動詞は、語幹に同じ。(例:yom-)
母音語幹動詞は、子音として-r-を補う。(例:tabe-r-)
用法
①文の終止
終止連体辞"-u"に接続して、文を終止する。(例:yom-u)
②連体修飾
終止連体辞"-u"に接続して、連体修飾(体言=名詞を前置修飾)する。(例:tabe-r-u koto)
③仮定形への接続
仮定形を表す"-eba"や"-edomo"などに接続する。(例:yom-eba / tabe-r-edomo)
④「助詞」・「助動詞」への接続
(原則)終止連体辞"-u"に接続して、その後ろにさらに「助詞」・「助動詞」が接続する。(例:yom-u-souda / tabe-r-u-to)
終わりに
以降は、命令形と不規則動詞を検討する。
こうして見ると、終止形がほぼ消滅して連体形に合流したのは当然ながら、それ以上に現代では未然形・仮定形が弱体化しているのがわかる。未然形は、かつては「ばや」「なむ」仮定の「ば」さらに前回排除した推量の「む」などが接続したものの、現在では否定・受身・使役の三形が主となってしまっている。
しれっと仮定形の-e-は認めず、「助詞」の「ば」のほうに付加したのだが、現代語において仮定形があえて活用形である意味はなかなか思いつかないものである。このあたりの話も追って書いてみたい。
*1:国文法用語はひとまず「」で括って使用しています