付読点法の検討-1 重文・並列(等位接続)

付読点法を作りたい

かねてよりやりたいと思っていたのが、読点のふり方についてある程度のガイドラインを設けることです。自分の頭の中ではぼんやりとした規則が存在するのですが、しかし付読点法の悪さ故の読みづらい文章に対して、斯く直すべしと提示するだけの確固たるものではありませんでした。世間には読点のふり方で損をしている文章がかなり多くあります(と私は思います)。文法的知識なども活かしつつ、書く人の支えとなる指針が示せればと思います。

※ここでは付読点法についてのみ扱うので、文法的に厳密ではないことを使う場合もあります。ご了承ください。

※読点の振り方は自由なので、以下に書くことは全て※個人の感想です。

重文とは

今回はまず、重文について検討したいと思います。これは英語などで言うところの等位接続にあたる関係で、"S V and S V"や"S V but S V"など、2つの文から1つの文が構成されている文を重文と言います。また、等位接続絡みで、名詞(句)などの並列関係についても扱います。*1

 

例文と検討:重文(連用形または接続助詞「て」)

  • 1. 私は高校生で弟は中学生だ。
  • 2. 私は走り弟は歩いた。
  • 3. 私はテレビを見て弟は漫画を読んだ。

【所感】これは特に疑問に思うところもないでしょう。うるさくならない程度であれば、重文の区切れ目に読点を付すのが良いでしょう。

  • 1. 私は高校生で弟は中学生だ。
  • 2. 私は走り弟は歩いた。
  • 3. 私はテレビを見て弟は漫画を読んだ。

例文と検討:重文・重複文(その他)

  • 4. 私はオレンジジュースを弟はリンゴジュースを買った。
  • 5. 私はオレンジジュースを飲み弟は持ち帰った。

【所感】4.については見づらいので、並列部分に読点を付すと良いでしょう。これは重複文というやつで、動詞が共有された形で主述関係が2つ収まっています。

5.は目的語が重複を避けて省略されていますが、実態はシンプルな重文と同じですから、これも文の切れ目に付しましょう。

  • 4. 私はオレンジジュースを弟はリンゴジュースを買った。
  • 5. 私はオレンジジュースを飲み弟は持ち帰った。

例文と検討:並列

  • 6. 私は走ったり歩いたりした。
  • 7. 私はそのぬいぐるみを抱いたり投げたりした。
  • 8. 私はテレビを見たり漫画を読んだりした。
  • 9. 私はオレンジジュースとリンゴジュースを買った。

【所感】6.は自動詞の並列になっていますが、これは特に長くなければ敢えて付すこともないでしょう。むしろ、主述関係が切断されて見えてしまうかもしれません( 「私は走ったり、歩いたりした」)。

7.は目的語を共有する他動詞が並列していますが、これも敢えて付すこともないでしょう。目的語関係が切れて見えそうです(「私はそのぬいぐるみを抱いたり、投げたりした」)。

むしろ目的語の直後に読点を付して、以降の並列を明示するのも手かもしれません(「私はそのぬいぐるみを、抱いたり投げたりした。」)。

これでは気持ち悪いので、文法的に対称になるように*2、「は」の直後にも打ってみましょうか。

8.は他動詞の並列なので、これは長いですし読点で切っても良いのではないでしょうか。

9.は動詞を共有する目的語の並列です。これは「と」の直後に下手に読点を置くと、並列が切断されて見えてしまうかもしれませんから、やめましょう(「私はオレンジジュースと、リンゴジュースを買った」)。

むしろ7.の戦略同様、「は」の後ろに読点を付すのはどうでしょうか(「私は、オレンジジュースとリンゴジュースを買った」)。

こちらは動詞部分が短いので、「を」直後の読点はやめたほうが良いでしょう。

  • 6. 私は走ったり歩いたりした。
  • 7. 私は(、)そのぬいぐるみを(、)抱いたり投げたりした。
  • 8. 私はテレビを見たり漫画を読んだりした。
  • 9. 私は(、)オレンジジュースとリンゴジュースを買った。

例文と検討:3個以上の並列

  • 10. 私はりんご(と)みかん(と)いちごを買った。

英語だったら原則A, B, and Cと決まっていますが、日本語だとどれが原則ということもなさそうですね。読点以外に中黒を使う勢力もいそうです。

「と」連続は避けたいですが、とりあえず考えられるパターンを列挙してみましょう。

  • りんごとみかん、いちごを
  • りんごと、みかん、いちごを
  • りんご、みかんといちごを
  • りんご、みかんそして苺を
  • りんご、みかん、そしていちごを

もしかしたら漢字だと変わりますかね?

  • 林檎と蜜柑、苺を
  • 林檎と蜜柑、苺を
  • 林檎、蜜柑と苺を
  • 林檎、蜜柑そして苺を
  • 林檎、蜜柑、そして苺を

ぐだぐだ列挙しましたが、単なる名詞の並列であれば、ここは中黒の優勝だと思うんですよね。個人的には。

  • りんご・みかん・いちごを
  • 林檎・蜜柑・苺を

ということで、次の通りに。

  • 10. 私はりんごみかんいちごを買った。

まとめ

各節がある程度短い場合について、

重文:文の区切れ目に付点。

重複文:並列部に付点。

自動詞並列:付点しない。

他動詞並列(①OV1V2 ②O1V1O2V2 ③O1O2V)

①:(、)O(、)V1V2

②O1V1、O2V2

③(、)O1O2V

3個以上の並列(名詞):中黒を使う。

というのが良いのではないでしょうか。違和感などあればお教えください。

長くなった場合についてはまた今後検討します。次は複文(従属接続)や副詞について検討しようと思います。では。

*1:冒頭でお断りしたように、そもそも日本語の従属接続は接続副詞であることなどを考えると、日本語の接続関係を等位・従属で分類すること自体が無粋というか、筋違いなのですが、ここではどうでもいいので、飛ばしています

*2:SO,Vは気になるからS,O,Vにしようと言う話です