付読点法の検討-0 「くぎり符号の使ひ方」を読む

句読点法のうごき

前回、読点の付け方について、文法的に一定の規則に基づいた一種のガイドラインを作ることで、書くことの助けとしたいと述べました。実は、読点の規則について考えたのは何も私が最初ではありません。

戦後、国語改革真っ只中の日本においては、主に文字改革(漢字の使用制限・新字体の導入*1)や新仮名遣い化による言文一致などが唱えられていましたが、この中で句読点などの符号全般についても規則化しようという流れがあったそうです。*2

これが、下に示す「くぎり符号の使ひ方」(文部省国語調査室編集、1946)です。

*原本については、上記のタイトルで検索すれば多くのPDFがみられますが、ここでは信頼できるものとして国立国会図書館のデジタルデータベースのリンクを貼っておきます。

dl.ndl.go.jp

さて、これは例文等も多く、読むと読点の部分だけで一苦労ですから、簡単に内容を下に箇条書きでまとめてみました。注意してはおりますが、大胆に短い言葉でまとめたので、不正確な部分が無いとは限りませんから、必ず原典も合わせてご確認ください

「くぎり符号の使ひ方」より「テン」をざっくりまとめ

一、文の中止
二、終止の形を取っていても文が続く場合
三、副詞的語句の前後(副詞的語句=接続詞・感嘆詞・呼びかけ等含む)(口調の上で余分なものは消す)
四、形容詞的語句が重なる場合(三を援用)
五、〃(第一の形容詞の下のみでもよい)
六、語や意味の附着で誤読を招く場合
七、読みの間(例はオノマトペ:「かん、かん、かん」)
八、提示した語の下(主題提示である:「秋祭、それは〜」)
九、中黒と同様(但し、読点でなくては読みづらい例アリ:「天地の公道、人倫の常経」)
十、対話・引用文の鉤括弧の前
十一、対話・引用文を「と」で受けた直後(「と言って/思って」などは打たない。下に主格や他の語が来る場合に打つ)
十二、並列の「と」や「も」(必要な場合に限る)
十三、数字の位取り

感想

なるほど~~~と思わされる部分がままありますね。八の主題提示や、九の括弧内など、気付かされる部分の多いものでした。

しかしながら、曖昧な部分は多いものです。勿論、読点の打ち方は根本的には自由ですから、細々とルール化はできないのですが、それでも執筆のガイドラインに足る程度の目安は提示できる規則が用意してみたいですね。

また、これは個人的趣味なのかもしれませんが、三・四の「余分な読点は消す」スタイルがどうも腑に落ちません。自分が読点を打つときはいわば"加点法"でつけているので、"減点法"を推奨されても……と言った感があります。

加えて、三の「副詞的語句」という言葉の示す広さにも着目したいところです。これは次回扱う予定である従属文さえも含まれているもので、とにかく広い範囲を指し示しすぎてはいないでしょうか。この「副詞的語句」と今回は一括りにされた部分についても、細分化を(もしかしたら無意味な行いなのかもしれませんが)試みたいと思います。

*1:これらは評価できる点も大きいですが、目指す方向性がそもそも漢字廃止よりの立場だったため、一時の間に合わせ程度のクオリティで先走ってしまった結果、現代に多くの不規則な字体のぶれ(例えば「麺麭(パン)」のばくにょうは二文字の間で新旧字体に分かれてしまっている)や、漢字の代用による混乱(例えば当用漢字外だったために植物のふるい状の構造をしている「篩管」は「師管」となり、意味が通じなくなった)

*2:実は、下記PDFがの冒頭にあるように、「くぎり符号の使ひ方」以前に明治期にも何かあったようです。今回は未確認です