推量「う」を語幹接続だと考えてみる【動詞接続形試案-1】

書こう書こうと思って触れていなかったのが格助詞の話と動詞の「活用」の話なのだが、ついに日本語の動詞について、少々思いついたことがあったので走り書き程度に記そうと思う。

 子音語幹・母音語幹・不規則

まず、日本語の動詞は「活用」ではなくて、接辞の類なのではないか、という立場に立つ。*1

そしてここで、日本語の動詞を子音語幹動詞(←五段動詞)・母音語幹動詞(←一段動詞)・不規則動詞(←サ変・カ変)と大別してみる。*2

この分類をひとまず整理して記してみる:

●子音語幹動詞(例:「読む」)

語幹:yom-

yom-a-nai / yom-i-masu / yom-u(-koto) / yom-eba / yom-e

●母音語幹動詞(例:「食べる」)

語幹:tabe-

tabe-nai / tabe-masu / tabe-r-u / tabe-r-eba / tabe-r-o

●不規則動詞「する」

語幹:s- / su- 

s-i-nai / s-i-masu / s-i-ro

su-r-u(-koto) / su-r-eba

●不規則動詞「来る」

語幹:k- / ku- / ko-

k-i-masu

ku-r-u / ku-r-eba

ko-nai / ko-i

学校文法式の接続で旧来の6つの活用形に相当する形を示した。これについての問題点など詳細の検討は以降に回すとして、一つ省いている形があるのがおわかりいただけるだろうか。そう、推量の助動詞「う」・「よう」である。

推量「う」「よう」の接続を検討する

以上を表記した段階では概ね綺麗にまとまっていた動詞の接続表だが、ここに「う」・「よう」を足すと、子音語幹はyom-o-u, 母音語幹はtabe-you, 不規則はs-i-you, ko-youとなり、大混乱である。この「う」「よう」のためだけに、それぞれ接続する形をこしらえてやらねばならなくなる。それはどうしても避けたい。そこで、次のようなルールを考えついた。

  1. 推量「う」「よう」の形は、"-ou"に限定する。
  2. "-ou"は、語幹に接続する。
  3. "-i-ou"と、"i""o"が連続した場合は、発音のために"y"を補う。
  4. (カ変kur-のみ)"-o-ou"と、"o""o"が連続した場合も、発音のために"y"を補う

このルールに則ると、おそらく新たな活用形の用意も要らず、「う」「よう」の共存体制も必要なくなり、上手くいくはずだ*3

実際に、yom-ou, tabe-y-ou, si-y-ou, ko-y-ouと、全て語幹接続で表記できる。

元は「あらむ」→「あらう」→「あろう」のように変化してきた形だろうが、現代語だけを見れば敢えて未然形に置いておく必要もないと思われるので、こう処理してみるのも一つの手ではなかろうか。

 

あくまで試案程度のものですので、何か欠陥などありましたらお教えください。また、全く歴史的変化などについては考慮していないことについてはご了承ください。この動詞分類については別の機会に丁重に書き記したく存じます。

kanchoiki.hatenablog.com

*1:この辺りはとりあえずぼかしておくが、印欧語の活用と、日本語の動詞の語尾変化を並べられても……という気がするのは共感頂けるだろうか。

*2:これは、たとえば上一段動詞「射る」は、(い/い/いる/いる/いれ/いよ・いろ)と活用し、"い"が語幹なのにも関わらず、便宜上語幹"なし"と扱われている点を解決するための一案である。実際に他の活用の動詞でも、学校文法で活用語尾とされている部分の中に、五段動詞ならば子音、一段動詞ならば(子音+)母音が変化せずに残っていることがわかるだろう。

*3:ちなみに「る」「られる」や「せる」「させる」の共存も、それぞれ-aru, -aseruの形で統一できます。