「もとのもくあみ」を知っていますか

知っていますか?

「もとのもくあみ」という言葉があります。自分は、特にどこで知ったということもなく、親や祖父母が使っていたために、特に意味も知らずに使っていました。概ね、「元サヤ(元の鞘に収まる)」と言った意味でしょうか*1 むしろ私は元サヤのほうが使いません。

語感の良さ

この言葉の面白いところは、なんと言っても語感の良さでしょう。

昭和じみたものでは「当たり前田のクラッカー」とか「余裕のよっちゃんイカ」なんて言い回しもありますが、「元に戻る」「元通り」程度の意味を「もとのもくあみ」と長めに語呂よく言えるのはかなり魅力的です。

実際に私は、「もとのもくあみだね」とか「もとのもくあみ、ってわけさ」なんてふうに使います。M音の頭韻が素敵です。

だからこそ、私はこの「もくあみ」には「よっちゃんイカ」よろしく特に意味がないものだと思いこんでいました。

ところが、この言葉がたまたま通じなかったとき、友人に意味を教えようとちょっと調べたら、意外なことがわかったのです。

「もくあみ」=「木阿弥」さん?

どうやら、簡単にまとめると、「木阿弥」という人物がいて、主君が死んだあと、その人が主君の子の後見かなんかで一旦は高い地位を得たものの、子の成年により元の地位に戻った、という由来らしいのです。へえ。

そんな深い意味があったとは。よっちゃんイカと並列に扱ってすみません。

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これを知ったのが一昨年ぐらいのこと。しかし、今回ふと記事にしようと思ってもう一度調べてみると、(恐らく一昨年見たであろう)『大辞泉』とは違う記述をも発見しました。コトバンク面白いですね。

kotobank.jp

全文引用するのも気が引けるので、ぜひリンク先をご参照ください。

なんと、筒井順慶にまつわるエピソードではないという説もあるそうで。*2

「も」の頭韻によるリズムのよさで常用され、「もくあみ」の語から広がるイメージによってさまざまな説を生んだものと考えられます。

(「元の木阿弥」-『ことわざを知る辞典』, 2021/06/20閲覧) 

実際に木阿弥さんがいたかどうかは知りませんが、「もとのもくあみ」という発音の面白さは特筆すべきものがあります。みなさんも時を見計らってぜひ使ってみてくださいね。

 

*1:元サヤは人間関係にしか使わないかもしれませんが、もとのもくあみは事柄にも使います

*2:ただまあ、『大辞泉』も採用していることですし、筒井順慶にまつわる話だという説が比較的有力なのでしょうかね