「抹茶ラテ」にコーヒーは入っているか
抹茶ラテブーム到来
空前の抹茶ラテブームである。綾鷹カフェなる商品が発売されると、一時あちこちで在庫切れになるという騒ぎが起きた。後発で、クラフトボス抹茶ラテも発売された。
ペットボトルのお茶/コーヒー業界を支配する一大ブランドの両者が、ブルーオーシャンだった「抹茶ラテ」業界に参入して全面対決、という形であろうか。
思えば、クラフトボスが「ペットボトルコーヒー革命」を起こしたのも記憶に新しい。それから5年の時を経て、「抹茶ラテ革命」となるのだろうか。
ラテ=コーヒー?
ところで疑問に思うことがある。〇〇ラテは、基本的にはコーヒー入りであることが多い。これはカフェラテの「ラテ」を取っているからだ。たとえば、キャラメル・ラテに入っているのはコーヒー・ミルク・キャラメルだ。
では、抹茶ラテには抹茶・ミルク・コーヒーが入っているのかというと、少なくとも上記の2商品には入っていない。どうしてだろうか。
辞書を引いてみると
カフェラテ【caffè latte(イタリア)】
コーヒーに温めた牛乳を加えたもの。コーヒーはエスプレッソを用いることが多い。◇「カフェラッテ」ともいう。「ラッテ」は「牛乳」の意。(コトバンクより,『飲み物がわかる辞典』,2021/8/19閲覧)
そう、辞書にある通り、カフェラテとはそもそもイタリア語でコーヒー、ミルクという意味である。つまり「ラテ」だけではただ「ミルク」という意味にすぎず、コーヒーであることを必ずしも意味しない!
しかるに、「キャラメルラテ」は「キャラメル・ミルク」であり、語源を考えれば、本来これにコーヒーが入っている道理は全くないのだ。
ちなみに、下に引用したように、カフェ・オ・レはフランス語であり、単に言語の違いなのであるが、カフェラテはエスプレッソ、カフェ・オ・レはドリップコーヒーを使うとして区別されることが多い(が、定義と逆だからといって誤用と指摘できるほどの厳密性はない)。
カフェオレ【café au lait(フランス)】
濃いめにいれたコーヒーに同量の温めた牛乳を加えたもの。フランスでは朝食時に好まれ、カフェオレボウルという持ち手のない大ぶりなカップで供されることが多い。◇「カフェオーレ」ともいう。
(同)
では、理論がわかったところで、実際の店舗における「ラテ」や「抹茶ラテ」の取り扱いについて見てみよう。
スターバックスでの取り扱い
スターバックスのサイトを見てみると、「スターバックス・ラテ」を始めとして、コーヒーとミルクが入ったものは〇〇ラテと呼ばれている。一方、紅茶にミルクを入れたものはティー・ラテと呼ばれているようだ。抹茶はティーの方に分類されているから、抹茶 ティー ラテと書いてある。これはわかりやすいかもしれない。
ドトールでの取り扱い
もうひとつ見てみよう。ドトールのサイトを見てみると、こちらも基本的にコーヒー入りのものがラテだ。アイス豆乳ラテなどは、コーヒー+豆乳という始末である(名前は豆乳・ミルクなのに)。しかし、ドトールにおいても、おそらく唯一の例外として抹茶ラテはコーヒーが入っていない。
まとめ
- 「カフェラテ」は「カフェ」(コーヒー)+「ラテ」(ミルク)だが、巷に溢れる〇〇ラテは「カフェラテ+〇〇」であることが多い。
- しかしながら、抹茶ラテだけは例外で、同じ名前をしながらもコーヒーは入っていないことが多い。(※コーヒー入りの抹茶ラテなどもあるらしい)
ややこしい言葉の世界、いかがでしたか。輸入された外国語の「ラテ」は、本来の意味がよく確認されないまま「カフェラテ」の略語として接尾辞に成り下がっていたようです。こういうのを見るとすぐ言語に詳しい方々が「誤用だ!」とおっしゃることがありますが、私としてはこのくらいが日本語らしくて面白いなと思います。